就業規則のいろは ~とある社労士の独りごと~
というわけで、今回のテーマは真面目にセンシティブな話題です。
昨日(10日)、ネットニュースを見ておりましたら、中古車販売会社役員と社労士がまぁ共謀して(という言い方が結局は正しいんでしょうね・・・)、雇用調整助成金の不正受給をしたとして警視庁から告発されたと記事に載っておりました。私のHPの別コラムでも再三申し上げている通りですが、この雇用調整助成金(以下「雇調金」と呼ばせて頂きます。)については、本当に本当に多くてそれこそ、「助成金」、「不正受給」と検索すれば山のように記事が出て参ります。
この就業規則のいろはでも以前お伝えしたかと思いますが、助成金の不正受給については最近の法改正もあり非常に厳罰化されており、不正受給を受けた企業はもちろんその不正受給した助成金及び利息もつけてキッチリ返済しなくてはなりません。さらにこのように「詐欺罪」として刑事罰を負わされた上に、しばらくは助成金の申請自体ができなくなります(まぁその前に本業自体が続けられるかも怪しいですが・・)。
一方加担した社労士はどうかというと、当然のことながらタダでは済まず、社労士法第25条に従い、「戒告」、「1年以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止」または「失格処分」と定めております。ただし、「戒告」または「1年以内の業務停止」であったとしても、助成金の申請代行については5年間はその社労士による申請は出来ないとなっておりますので、暫くこの助成金に関する業務は出来ません(ただ今回はいない社員いることにしてとまぁ確信犯として不正受給してますし、社会的事件になっておりますゆえ、この社労士はそれこそ失格処分(つまり資格剥奪)になるのではないでしょうか。
(とまぁそれはそうですし、この会社役員及び社労士も確信犯的にやっているので反論は出来ないところではありますが、この雇調金自体の受給要件もコロナの感染が始まった当初についてはメチャクチャ申請要件が緩和されており、例えば添付書類のタイムカードなんかは手書きでも受け付けてくれた時があったので、それを考えると少々政府としての対応もどうかと思いますが・・・)
ではなぜこんなに助成金の不正受給は続くのでしょうか??
会社からすればこれはいわずもがな、本来の助成金の目的を忘れて「ただで返還不要のお金が国から受けられる。」とか、「苦しものは藁をもつかむでお金をいただく。」的な発想で不正受給をしてしまうんでしょうね。あと、これは全くの私見ですが助成金の受給そのものを軽く見ているのもあるのかなって気がします。
次に「社労士からの視点」です。実はこれは様々な要因がありますが、一つ言えるのがこれまで助成金の代行申請は社労士にとって大きな収入源の一つであったということが言えます。助成金の手数料は社労士によってまちまちではありますが、まぁ相場としては約20%くらいは頂いているのではないでしょうか(ちなみに当事務所は助成額によってその手数料率が変わります。)。仮に今回のように400万とか助成していたら、その20%の80万ですから、これはかなり大きな手数料となります(そのため、助成金受給代行を専門としている社労士もいるくらいです。)。
そして今回の雇調金の申請代行では、一時この申請が集中し社労士が足らなくなるくらいに申請代行が集中して、社労士によっては、「もう雇調金と両立支援助成金だけはやりたくない!」なんて言った社労士もいたとか(笑) しかし一方では多くの社労士がその「恩恵」をこの2年くらいの間受けたのではないでようか。
ただし、この雇調金の本当に多額の支出で、そもそもの雇用保険の財源が相当目減りしてしまったようで、それまで比較的受給し易かった他の助成金も(例えばキャリアアップ助成金)、法改正によりかなり基準が厳しくなっており、今後助成金はそう易々とは受給できないものになっていくのではないかと思われます。
そうすると助成金の申請をそもそも主たる業務としていた社労士は相当厳しい状況となり、もちろん1号業務(、社会保険や労働保険等の申請書類の作成と提出代行業務)や2号業務(労働社会保険関係法令に基づく書類の編纂整備(労働者名簿、賃金台帳や就業規則))といった社労士ならではの業務はございますが、助成金ほど手数料は高くはなく、かつ老舗の会社やある程度の規模の会社になりますと、既に長年お付き合いしている社労士事務所とかございますので、なかなか立ち入る隙がないのが実情です。。
そのため、「分かってはいるが、生きていかなくてはいけないがゆえ・・」とか、「これくらいはバレないだろう・・」ということで、その”不正受給”に加担してしまう悲しい実情ではないかなと推測します。
但しです・・・
以前も当コラムでお伝えしたように、不正受給の懲罰は会社にとっても社労士にとっても「救われない結果」となります(→以下参照 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000919896.pdf)
もちろん、それはどういうことかというと、会社にとってはもはや操業出来なくなるということ。そして社労士にとっては、「社会保険労務士としては退場!」ということです。
苦しいときに藁をも掴みたくなる気持ちは私も痛いほど分かります。でもそんなときこそ、「自身を深く見つめなおし」かつ「自分は一体社会に対して何が貢献出来るのか?」と考えることで、おのずとやるべきことがみえてくるのかなと当社労士は考えます。
社会保険労務士東拓事務所
私共社会保険労務士東拓事務所でも、他のご相談事項と並行して助成金をご案内致しますし、助成金の申請代行ももちろん承ります。但し、現在、以前の支給要件自体が大幅に緩和され、かつ助成しやすい助成金はほぼございません。但し、今後の企業の発展と人材の育成の一助となる助成金であれば積極的にご案内致しますので、まずはお気軽に当事務所にご相談下されば幸いです。