就業規則で防げるトラブルとは?

1.就業規則で防げるトラブルとは?

実のところ、労使間トラブル等でご相談を受けた際の会社の多くの就業規則が、残念ながら会社の実態に合っておらず、改正法も改定されていなかったというのが実情でした。

特に就業規則が合ったら防げただろうと思われるのは、解雇や残業といったところよりも、その前の問題で意外に普段気が付かない部分ところでトラブルが発生したという事案が多いのが事実です

例えばですが、

① 無断の遅刻や早退、欠勤が続く社員への応対

どの会社でも意外とこういった社員はいるようです。しかしながら、就業規則上は、この無断の遅刻や早退、欠勤が続く社員への制裁が規定されていない会社というのも多く存在します。

無断欠勤や早退、欠勤を繰り返す社員が社会一般の常識からするとそもそも問題ではありますが、会社としては無断欠勤及びそれを繰り返した日数等明確に規定していなかった場合、その社員に制裁(減給や解雇等)を課すことは簡単には出来ません。

実際にご相談を頂いた事例で、その会社で入社後間もない社員ではあるのに病欠と出勤を繰り返す社員がおりました。最初はそれでも本人より休暇申請等前日ではあるものの連絡が入りましたが、そのうち無断欠勤が続くようになりました。それでも時には本人と連絡が繋がる事もあり、その際は本人より、「今後はキチンと病気の連絡を入れる。」という事は言うものの、やはりその後無断欠勤を繰り返す状況で、会社としてもこのままにはしていられないという事で解雇という事で、退職処理を実施したそうです。

但し、その後、本人は外部組合に相談し、不当解雇として通知が会社に届き、驚いたその会社社長が私共に相談してきたことがありました。そこでまずは就業規則をお調べしたのですが、就業規則には肝心の無断欠勤の条項がなく(例えば「無断欠勤が7日以上に及んだときには退職したものとみなす」)、結局組合と事務折衝を数回重ね、3カ月分の月給分及び会社とは解雇ではなく「退職合意」という事で退職して頂きました。

ここでのポイント

もし就業規則に「正当な理由がなく、無断欠勤が7日以上に及んだときは退職処分とする。」等条項が入っていれば、退職または懲戒処分としての解雇が実施出来た可能性がありました。


② 試みの使用期間延長に関するトラブル(専門部門の管理職者候補の事例)

どの会社の就業規則にも「試みの使用期間」というのが定められているものです。

試みの使用期間は、いわば採用した社員が会社の求める職責及び職務に見合う能力や職能及び経験があるかを判断する期間といえます。この試みの使用期間の平均は入社後約3か月ですが、中にはこの3か月ではなかなか判断がつかない社員または、会社が期待していた能力や経験が足りないと感じる社員もいるようで、その時に会社としてはこの試みの使用期間そのものを延長したいと考えることもよくあります。

このケースは、とある外資系企業のとある専門部門の課長候補として入社した方の事例です。その方は、専門部門の課長として入社したのですが、入社後間もなく、課長として本来備わっていなければならない知識や経験が乏しく課長としては致命傷である数字の間違いが多いという事が露見してきたようです。

更に外資という事で親会社の本国とのコミュニケーションも発生しますが、当初期待していた語学力も不足しておりました。課員とのコミュニケーションにも難がったようで(ハラスメント的な言動や態度)、その課の課員からの苦情が人事に相次ぐこともあり、入社後1カ月経った時点で会社としては解雇または退職勧奨で考えていたようです。

但し、本人の性格にも難があるという事から、不必要なトラブルを避ける意味もあり、試みの使用期間を更に3か月延長することとしたようです。

そしてその延長期間中に社長と人事部担当者がその課長に対して退職勧奨としての面談を数回実施したようです(社長も少々感情的になる方だったようです。)。これに対してその課長はご自身でも弁護士をつけて会社に対して「退職強要」として通知送ってきました。そこでご相談を受けて諸々状況を確認する中で、一番の争点となったのは、就業規則内に、確かに試み使用期間の条文はあったものの、それを延長する条文はなかったので、結果として「退職合意書」という事でその本人には退職して頂く事には同意してもらったものの、6カ月分の退職合意金を支払う事になりました。

ここでのポイント

私もこの課長だった方と少々お話しする機会がありましたが、私の感覚からしても明らかに人間性や性格に問題があると感じましたが、一方では採用の段階でその資質を見抜けなかった会社にも責任があり、社長と人事担当者の対応が早急過ぎたこともあり、そして何よりも就業規則に例えば「会社は試みの使用期間の社員の就業状況に照らし合わせて、更に6か月間延長することもある。」等記載もなかったことで会社としては大きな代償を払った結果となってしまいました。

以上、2つの事例をご紹介しましたが、いずれの事案についても就業規則を少々見直しまたは改定するだけで、会社としては例え予防や防止が出来なかったとしても、ここまで大きな代償はなかったのかと思われる事例です。

しかし社内で将来的に予防または防止、軽減出来るリスクを測定し、そして就業規則を改定するのはなかなか困難なことです。

ぜひ、一度私共社労士にご相談ください。

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