就業規則で予防できる退職時の具体的トラブル

退職時のトラブルは増加傾向

まず会社側と労働者の関係が良好で円満退職を出来るような状況であれば、就業規則上の事で問題となるケースはほとんどないと言って良いでしょう。

但し、会社や本人としては表向きの理由が「キャリアップ」等であったとしても、本当のところでは円満退職ではないケースが圧倒的に多いのが実情です(そもそも良好な関係であれば退職はしないので。)。最近特に傾向として多くなってきているのが、この雇用契約関係の最後のイベントといえる退職時の双方の会社の相違、または対応での事例です。それではなぜこのように退職時のトラブルが多くなってきているのでしょうか。

もちろんそこには様々な理由がありますし一概には何とも言えないところでしょうが、細かく紐解いて考えてみるといくつかの要因で退職時にトラブルが発生している傾向があるようです。

1.解雇に関するトラブル

まず退職に関するトラブルで多いのがこの解雇によるトラブルです。

その理由は就業規則上、解雇に関する条文がしっかりと整理されていない事。就業規則の項目でお伝えしたように、就業規則を本やインターネット等で取得したものをほぼそのままその会社の就業規則として転用している会社が多く、そのため、その会社の「実態」に即していないことが多いので、いざ解雇事由に該当する社員に対して解雇をしようとしても、しっかりとその解雇要件に当てはまるかどうか分からないケースが多いからです。

以前、私がご相談に応じた企業で中規模の石油化学工場がございました。その工場内では喫煙は禁止されておりましたが、喫煙違反を3回も繰り返す社員がおり、勤務態度も良好とはいえないことから、解雇を実施することになりました。その社員は最初こそ解雇を受け入れる素振りをみせていたものの、途中弁護士も踏まえ解雇無効を訴えて参りました。

但し、就業規則の解雇事由については、肝心の喫煙に関する事項はなく、結局労働審判上数か月の和解金及び会社都合退職という事で決着をつけた事例がございました。

2.退職日に関するトラブル

解雇に続き意外にトラブルが多いのがこの「退職日」に関するもののようです。

就業規則の退職日の定めで「退職を希望する日の1カ月以上前に申し出るように』と定めている会社が多いようです。しかしここで多くの場合に問題になるのが、退職の申し出と引き継ぎのトラブルです。

単純作業でマニュアル化できるような作業ではトラブルはあまり問題となることはありませんが、一般企業で専門的な部門や中小企業で従業員も少ない会社などは、一つの部門に人数も少なくかつ業務の進め方、現在の進捗等が属人的になっていることがあります。

そのような状況では、引継ぎについてはある程度期間を会社も設けたいところではあるので、会社の業種や規模や人員数にもよりますが、就業規則等にて「退職の申し出は60日以内」等敢えて定める必要があるかもしれません。

但し、民法では2週間前に予告すれば退職できることとなっているので、これは任意の規定となります。

有休消化は認めるべきか?

とはいえ、状況によっては退職する社員の後任も決まっておらず、これから採用しなくてはならない状況ですぐには引継ぎ自体が出来ないケースもあります。これは私のこれまでの経験ですと、労使関係がある程度良好であり、かつ常識のある社員であれば、引継ぎ期間及び有休休暇も考慮して就業規則に関わらずある前もって退職の意思表示を前もって伝えてくれる傾向があるようです。

但し問題は、その社員と会社の関係が悪化しているか、そもそもあまり質の高い社員ではなかった場合などは、引継ぎ期間などは考慮しておらず、私の経験の上で、とあるマーケティングマネージャーの方で、確かに就業規則上の1か月前の退職の申し出ではありましたが、その後3日で有休休暇に入ってしまったというケースがありました。

それでは引継ぎもキチンと行わず、有休だけを申請してきた社員がいた場合、有休申請を認めない事が出来るかというとそれは出来ません。少なくとも労働基準法に定められた日数分(労働基準法第39条)は法律上当然に権利が発生していますので、会社が退職時に有給消化を認めないこと自体が違法行為になります。

このように意外と重要になってくるのが退職日に関する就業規則上の定めですので、ある程度余裕も持って退職日を設定することが重要です。

3.就業規則の整備が重要

いずれにせよ、退職に関するトラブルは意外に多いので、未然に防止またはトラブルを軽減させる意味でも就業規則については以下の見直しが必要です。

  1. 一般的に認められうる解雇事由の取り決めとともに、その会社の実態に合った解雇事由がきちんと就業規則に記載されているか
  2. 自己都合退職に関するルール(申し出に関する期間を含めて)が明確化されているか

とはいえ、なかなか上記事項を踏まえて会社の実態にあった就業規則を整備するというのは、時間も掛かりますしまた改訂した就業規則が法令その他に照らし合わせて、会社にとって就業規則として実効性のあるものかを判断するのは難しい事です。やはり専門としている私共社労士にご相談ください。

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