就業規則のいろは ~とある社労士の独り言~
社労士の中でも、就業規則の作成、改定といった事をいわゆる「メイン業務の一つ」としている方は多いようですが、残念ながら、どれほど良く作られたり改定された就業規則でも完全に労使間のトラブルを防げるものはまぁハッキリ言えば「この世に存在しない。」といえます(法改正にともない、就業規則の条文が合わなくなっての改定や作成であればまだ話も分かりますが・・・)
とある企業で、遅刻及び欠勤を繰り返す社員がおりました。
一応就業規則上では、「正当な理由なくして、無断欠勤7日以上におよんだとき。」等定められており、結局この社員は解雇することになったようです(もっともそんな社員ですからかなり変わった性格なうえに、働き具合良くなくかつ同僚からの評判も良くなかったようですが・・)。
会社としても、何度か「このままでは就業規則の規定により、解雇せざるを得ないよ。」とか本人に何度か伝えていたようですが、結局最後はその本人と連絡すら取れなくなり、会社としては解雇通知も送ったようです。
ところが問題はこの後であり、その後突然本人から「不当解雇だ!」と弁護士を通じて通知があったようです。
結局この事例はどうなったか?
結論を言えば、その本人には退職してもらいましたが、会社としては数か月分の給料および退職金を含めて多額お和解金を支払うこととなりました。
辞めてもらったからよいのではと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、上記のようにその社員に明らかに帰責理由がある中で、就業規則に則って処置した結果、「多額の費用」が掛かっているのですから、会社としては溜まったものではありません。
それでは何故このような結果となったのでしょうか。
実は、上記の「正当な理由なくして、無断欠勤7日(休日含む)以上におよんだとき。」が最後論点になったのですが、その中で会社が本人に電話したりあるいは本人宅に訪問した際、何度か本人自身が応対したことがあり、その際本人は、「いや会社には出社します。」と伝えていたことと、記録らしい記録を会社がつけていなかったことで、結局「痛み分け」という結果となってしまったようです(まぁついでに言うと弁護士も弁の立つ方だったので。)。
つまりこの事例で言えるのは、どんなに細かく記述している就業規則でも、所詮こういった労働審判だの裁判だのに持ち込まれた場合、色々な角度から「屁理屈」を述べられるので、そうなったら一体どこまで会社としてその屁理屈に対して「切り崩せるか?」が争点となりますが、まぁ正直なところ、上述しているような社員であっても100%切り崩すのは至難の業といえます。
実は、この事例の会社から当事務所にご相談があったのは、この訴訟についての和解が成立した後で、その相談内容は、ずばり「罰則部分を見直しをしてくれないか?」という事でした(当事務所がこの件にかかわったのつまり事件後です。)。
もちろんご相談には応じてその後改定も行いましたが、その際、会社及び人事ご担当者にお伝えしのは、「就業規則を改定することはいくらでも出来ます。但し、それだけ就業規則で全て解決するわけではありません。」とお伝えしました。
さて、ここまで就業規則の「実態」を記載すると、「それじゃぁ就業規則を改定しても意味ないじゃん。」とか考える方もいらっしゃるかもしれませんが、言っておきますが、法改正に伴い就業規則を改定することももちろん必要ですが、会社の実態に合わせて就業規則を改定しておくことはそれでも必要です。
もし実態に合わせて就業規則の改定をしていなかった場合は、上記のような例どころではありません。会社はもっと酷い状態となります。
就業規則の改定だけではあらゆるトラブル等に対応する事は出来ません。要はその前にそういった「問題社員が出ないようする。」といった日頃の労務管理が重要になってくるわけであり、簡単に言えば、「そのような状況にならないようにする。」がまずは第1に考えることかなと思います。
社会保険労務士東拓事務所