第7回AMAZONの宅配委託された「運送会社」と「個人ドライバ」の是正勧告事例について考える(業務請負契約)

就業規則のいろは ~とある社労士の独り言~

本日(5/29)、知人の方からネット通販最大手かた誰もが知る「アマゾン」の荷物の宅配を運送会社から業務委託された個人事業主について、労働基準監督署より「丸和運輸機関」という会社が是正勧告を受けたという事例でした。


「なんとも分かりにくい!」という声が聞こえそうですが(笑)、是正勧告の内容は早い話が、その運送会社との業務委託で働いていた「個人ドライバー」の方が、労働基準法の「労働者」にあたり、かつその運送会社とのそのドライバーが、「雇用関係」にあたるという内容であり、そのため時間外労働をするにのあたり(または休日労働)36協定の届出が必要なところ、それが労働基準監督署に出されていないという内容でした。

もちろんその運送会社と「個人ドライバー」との間には「業務請負契約」はあったのでしょうが、「業務請負契約」において、”依頼者”(この場合はその運送会社)は指揮命令はしていけないとしております。あくまでも委託者は「成果物」のみ要求してそれに対して”受託者”(この場合はその個人ドライバーです。)は完成物を提出するのみです(この場合は預かり荷物の集配)。

もちろん、アマゾンのような大手かつ鬼のように集配が行われる会社で、「個人ドライバーさん、業務委託契約に則り宅配物をそちらの裁量で集配してください。」などの業務請負契約が実質成立するとは思えず(笑)、基本的には労働者のように、運送会社から「細かい指揮命令」があった事は容易に想像できます。(まぁこれは私の勝手な想像ですが、アマゾンもその実態は知っていたのでは・・)

それでは何故このように個人ドライバーと雇用契約ではなくて「業務請負契約」を結んで働かせていたのでしょうか?
もうお分かりになると思いますが、依頼会社としては雇用関係にして「煩わしい雇用管理の手間」を省きたいとか、社会保険料等いわゆる「余分な費用は払いたくない!」とかもあります。しかしもう一つ上げるのであれば、アマゾンをご利用した方は分かると思いますが、集配の方は大変な数を朝から晩まで、休みなどは関係なく無茶苦茶く配送しなくてはならないという「現実」があります。そしてそのためには、労働基準法36条を「なんとかすり抜けなければ・・・」と考えたいわゆる”苦肉の策”がこの「業務請負契約」かなと思います。

「なるほど、アマゾンもその運送会社も酷いな!」と、思われた方、すみませんがこれは”ほんの氷山の一角”です。
残念ながら、これも私の経験上ですが、対会社間はともかく、私が携わったこの個人と会社で結んでいる「業務請負契約」は「雇用契約」というのが実態で例外は一つもありませんでした(つまり”偽装請負い”です(笑))。

それではなぜ今回、このアマゾンから委託を受けたその運送会社と個人ドライバーの契約がこうしてクローズアップして世に報道されたのでしょうか。

まぁ簡単に言えば”見せしめ”です。
つまり労働基準監督署もその辺は実態はキチンと把握しており、「AMAZON」という会社をこうやって出せばインパクトは絶大でいわゆる”見せしめ”効果も抜群なので(笑)、特に運送会社とか多いのですが、労働基準監督署としては「知らないと思って”偽装請負い”を継続していると、いずれ刺しますよ!」といういわゆる”警告”なんでしょうね・・・

ちなみにですが、「偽装請負い」と労働基準監督署から認定されてしまいますと、個人ドライバーは「労働者」と認定されてしまいますので、遡って(時効では3年前までですが、悪質行為が認定されたら10年となります。)残業代等請求される可能性があります。認定されて以降ではありません。しかも利息を付けての時間外労働分の手当を支払わなくてはなりません。
そして当然のことながら36協定届出違反ともなりますので、是正勧告を受けた上で様々なペナルティーが課せられます(助成金や補助金の審査にも影響が出るかもしれません)。

但し、なかなか「業務請負契約者」まで把握して企業の雇用管理の実態を把握している社労士は少ないかなという気がしますので(業務請負契約は民法の範囲なので、そこでいうと社労士の法律の中には民法は出てこないので・・)、もし「うちの会社は大丈夫か??」と思われた方は、一度当事務所にご相談頂ければ幸いです。
それでは SeeYu

社会保険労務士東拓事務所

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