第10回 「アマゾン配達員 過酷労働で労組結成の動き」事件から考える~消えない個人事業者の偽装請負いの実態とは~

就業規則のいろは ~とある社労士の独り言~

以前、この就業規則のい・ろ・はでも記載しましたが、本日(2022年8月31日)はたまた請負事業者の事が記事に載ってましたので、私の方から再度本事件の概要を交えて考察を語りたいと思います。
(実は前回記事を載せたところ結構反響がございまして、何人かの方から「私も個人業者として働いてますが、偽装請負いじゃないかと思いまして・・・」なんてご相談でしたので・・)

前回(確か6月だったような・・)本テーマを取り上げた際お伝えしたことかもしれませんが、大手企業からの個人で業務委託している方の契約内容と実態を確認してみると、まぁよくてグレーゾーンしかし作業の実態をよく聞いてみると実は”黒でしょう”だったりします(つまり個人業委託という名の、”偽装業務請負い”です。)。
そして今回の労組や弁護士が語っている通りですが、その個人業者で業務委託契約を締結している方のいわゆる労働環境はズバリ「過酷」です(今回のように血みどろや意識を失っただのケースが横行してしまいます。)。もしその委託先の会社の社員であれば間違いなく労基からお呼び出しを受けます。ですが、業務委託であれば当社の社員ではないので、36協定だのは全く関係ありません。深夜だろうが早朝だろうが関係ありません。”つまり”この個人の業務委託が消えない理由はそこにあります。

前回も申し上げたかもしれませんが、企業側では社会保険も労働保険も負担する必要はないですしそもそも労務管理だのをする必要もありません。つまりは労働基準法だのも関係ありません。
Amazonのような大きな会社でかつ1日の配送量がどんでもない数になると、まさに深夜や早朝だの昼休みだのお休みだの言っている場合じゃなくなるんでしょうね。そのため基本的にはこのように個人と業務委託契約を締結していわゆる”委託業務”として配送してもらうんでしょうが、実態はズバリ「労働者」です。
但し、今回少々驚いたのは、6月にあれだけ公表されながらも、あまり改善がされなかったことでしょうか。もしかしたらAmazonくらいになるとそう簡単には是正するのはもはや不可能なレベルになっていたのかもしれません。
それとこれは全くの余談ですが、Amazonはまぁ人の入れ替わりが激しいです。部門にもよりますし業務にもよりますが、実は3年持ったら(もしかしたら2年かも)良い方かもしれません。正社員だろうが派遣だろうが年がら年中人が変わっております。そのため恐らくですが、この個人請負業者もコロコロ人が入れ替わっているのかもしれません(最初は「天下のAmazonだし仕事も結構くるから」なんて引き受けるのでしょうが、まぁ身が持たないんでしょうね。)
ちなみにですが、この業務委託契約の定義や解釈もなかなか難しいところがあり、受託されている個人事業者の方も実は自分の実態が分かっていないというケースも多くございます。

ちなみに記事には、

「配達員らは、いずれも下請業者との間で業務委託契約を締結し、アマゾンとは直接契約を結んでいないが、AIによる配送指示という直接的な指揮命令を受けていることから、「使用者」としての責任があるとして、アマゾンや下請業者に団体交渉などを求めていきたい考えだ。」

とか記載がございました。私も一人の法律家として語るのであれば、理想はその通りですしまたそうあるべきだと思います。但しこれは全くの私の私見ですAmazonだけでなく運送業を中心にやはり「根深く」浸透してしまっている個人業務請負の仕組みですので、これをクリアーにするとなるとかなり抜本的な解決策が必要となりますが短期には難しいのではと思います。
これは欧米系企業では周知の事ですが、Amazonのような欧米系の企業は、ユニオンに所属している社員を基本的に評価しない企業もございます。もちろん労基法においてそのような差別をしてはいけないとなっておりますが、しかし残念ながら事実は以上です。

社会保険労務士東拓

PS もしご自身の会社が”実態”として個人業務委託契約でお願いしている、またはご自身が個人業務委託契約で就労しており、上記事由に少しでも該当しているのでは思われた方は、まずは私共事務所にご相談ください。




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